オフィス移転時のネットワークトラブルを回避するための5つのチェックリスト
オフィスの移転は、企業にとって大きな変化を伴うプロジェクトです。単なるモノの移動だけでなく、 ネットワーク環境の再構築が必要になることもざらではありません。
この記事では、IT担当者がオフィス移転前に確認しておきたいポイントと、移転時によくあるネットワークトラブルを回避するための5つのチェックリストについて、解説します。
目次
1. オフィス移転前に確認しておきたいこと
IT担当者にとっては、オフィス移転時の業務停止時間を最小限にするのはもちろん、発生するトラブルを極力回避するための事前準備が不可欠です。
オフィス移転前に確認しておきたい項目を、具体的に確認しておきましょう。
引っ越しのタイミングでインターネット回線を見直すのもおすすめ
「オンラインミーティングで音声が途切れる」「データのアップロードに時間がかかる」など、現在使っているネット回線の通信品質に不満があるなら、移転を機に見直し、接続方式をIPoEに切り替えるのがおすすめです。
IPoEは「次世代インターネット接続環境」と呼ばれており、従来のPPPoE方式のようにボトルネックとなるネットワーク終端装置を経由しません。そのため、比較的ネットの混雑状況に影響を受けづらく、安定して高速な接続を実現しやすいことが特長です。
1-1. 現状のネットワーク構成を把握する
新オフィスでのネットワーク設計に役立てるためにも、まず現在のネットワーク構成を以下の観点で詳細に把握する必要があります。
オフィス内ネットワーク性能やセキュリティ対応状況
移転後のオフィスでは、現行と同等以上の接続性能が望まれるため、現状のオフィス内ネットワークの回線速度やトラフィックを測定し、把握しておくこと、そして現行環境においてその他に課題がないか確認しておく必要があります。
また、セキュリティポリシーに合わせた対策ができているか、ファイアウォールやVPN、セキュリティソフトウェア設定などを点検し、移転後もセキュアな状態を維持できるようにする必要があります。
オフィス内ネットワーク接続機器の種類や台数
ルーター、スイッチ、アクセスポイントなどのネットワーク機器だけでなく、サーバー、複合機などのネットワークに接続しているハードウェアについても種類と台数を把握しておきます。
フロア図面に記載するだけでなく、ネットワーク構成図があると分かりやすくなります。
IPアドレスの割り当て状況
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの割り当て運用も確認しておきます。
オフィス内のPCには通常、プライベートIPアドレスを動的に割り振りますが、インターネットに接続する機器には、グローバルIPアドレスが必要となります。
移転時に、スムーズに設定変更ができるように、設定情報は極力ドキュメント化しておきましょう。
インターネット回線の性能
現在利用しているオフィスのインターネット回線の品質や速度などの詳細を確認しておきます。
とくに、回線のプランや接続方法、回線スピードなど、利用している従業員にもヒアリングしたうえで、不満や不具合があれば、この機に別なプランに切り替えることも選択肢となるでしょう。
フロアごとの床面積と座席数、人員数
各フロアの図面をもとに、現状のオフィスで使用している各フロアや居室ごとの床面積、座席数、人員数を明確にしておきます。
電気容量の合計
パソコン、サーバー、複合機、ネットワーク機器に限らず、プロジェクター、外部ディスプレイ、ドリンクサーバーなど多くの電気機器を使用しているはずです。
移転先のオフィスで電気容量が不足することのないよう、現状で使用している容量は必ず確認しておきましょう。
1-2. 移転先のビルやオフィスの条件を確認する
他拠点との接続要件(拠点数、拠点ごとの人員構成、WAN回線速度)や利用形態なども考慮したうえで、新しいビルやオフィスのネットワークインフラやその他の物理的な条件を調査します。
ビルやオフィスごとの制約
移転先のビルによっては、特定の通信事業者の回線や特定の機器しか使用できないなどの制約があったり、接続方法が指定される場合もあります。
移転前に、ビル固有の制約事項がないか早めに確認し、自社のビジネス継続に支障がないか、判断しなければなりません。
ケーブル配線や電気容量の確保
フロア構造や天井、壁材の品質、LANケーブル配線、電気回路ごとの容量などについて明確にし、移転作業を円滑に進めましょう。
たとえば、床下に電源やLANケーブルなどの配線を収納できるか、壁や天井に無線LANアクセスポイントの機器を設置できるかといったことを事前に調査しておく必要があります。無線LANをメインに使うとしても、トラブル時に備え有線LANを敷設しておいたほうがいいはずです。
これらをしっかりと確認しておくことで、オフィス移転時のネットワークトラブルを未然に防ぐことができます。
2. オフィス移転時によくあるトラブル
オフィス移転時には、ネットワーク環境の変更に伴い、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
ここでは、オフィス移転時によくあるネットワークトラブルと、その対策をご紹介します。
2-1. PCが社内ネットワークに繋がらない
新しいオフィスでPCが社内ネットワークに接続できないトラブルは、移転前のネットワーク設定のままになっていて、設定変更していないことが原因のことが多いようです。
移転にあたって、ネットワーク設定の変更が必要なのであれば、オフィス移転前に変更内容を周知徹底しておきましょう。
また、特定のフロアだけで起きているトラブルであれば、床下のLANケーブル配線やスイッチの配線不備、無線LANアクセスポイントの不具合が原因かもしれません。
発生している事象や場所をもとに切り分けながら、原因究明する必要があります。
2-2. サーバーやプリンターが使えない
サーバーやプリンターが使えない場合、物理的な設置や接続の不備が原因かもしれません。
サーバーやプリンター側の設定の問題や機器の故障、あるいはPC側の設定に問題がある可能性もあります。
2-3. インターネットに繋がらない
オフィス移転までに、通信事業者の工事が完了しインターネット回線が開通していれば、自社のネットワーク設定に原因があるはずです。
ネットワーク管理者は、オフィス移転前にファイアウォールやルーターを正しく設定し、従業員が仕事をするフロアからインターネットに問題なく接続できることを確認しておかなければなりません。
オフィス移転後に社内ネットワークには繋がるが、インターネットには接続できないPCがある場合は、PC側のネットワーク設定を疑うことになります。
また、他のPCとIPアドレス競合が起きている可能性もあるので、その場合はPCを再起動して確認してみましょう。
3. ネットワークトラブル回避のための5つのチェックリスト
オフィス移転で発生するさまざまなトラブルを避けるため、注意するべき5つのチェックリストを解説します。
これまで通りの通信速度が保たれるとは限らない
回線事業者やプロバイダーを継続しても、移転先で同じ通信速度のネットが利用できるとは限りません。とくに、ほかの利用者からの影響を受けやすい「PPPoE」という通信方式を採用している場合には注意が必要です。
PPPoE方式は、プロバイダーごとに設置されたネットワーク終端装置を経由する必要があり、これにより同時に処理できる接続数が決まっています。地域によって利用者数が異なるため速度に差が出るほか、夕方や週末など、一般利用者が混雑する時間帯で遅延が発生しやすく、安定性の低い通信方式です。
オンラインミーティングやリモートワークへの対応など、通信量の増加が見込まれる場合には、新しい通信方式である「IPoE」に対応している事業者を探すという方法もあります。
3-1. インターネット回線の見直しと手配は早めに行う
今まで使用していたインターネット回線がPPPoE方式の接続だと、ネットワーク終端装置がボトルネックとなりやすく、新しいオフィスで使用する場合は注意が必要です。
オフィスのある地区によっては、利用者数が今までと異なり回線速度に遅延が発生することもあり、安定性が高いとはいえません。
今後、クラウドサービスがさらに普及し、インターネットアクセスが増加することも見越して、IPoE(IP over Ethernet)という、より高速で安定したインターネット接続方式に切り替えることも検討しましょう。
IPoEではネットワーク終端装置を使わず通信事業者のネットワークに直接接続するため、高品質な高速通信が可能となります。
なお、インターネット回線にはさまざまな種類がありますが、もしADSLやISDNを使っている場合は、2024年に廃止されることが決まっているため、新オフィス移転のタイミングで別な回線に切り替えましょう。
インターネット回線の手配を依頼してから、実際に工事が入るまでに、1-2か月かかることも多いので、日程には十分余裕をみて依頼することが重要です。
なお、インターネット回線は、業務で必要な通信速度や帯域幅を考慮して選択します。
オフィス勤務の従業員数や利用形態をもとに、トラフィックを試算するツールを活用することも有効です。
ここで算出した情報をもとに、インターネット回線の速度の目安とするのはいかがでしょうか。
3-2. 移転計画を入念にする
移転時に混乱を招かないためにも、事前に作業を洗い出し、詳細な計画を立てていきましょう。
移転先のビルやオフィスが確定したら、全体スケジュールを作成していきます。
スケジュールの作成には、移転先オフィスの入居日や現行オフィスの解約日などを確認したうえで、予備日も考慮にいれておきます。
全体スケジュールの中でも、以下の作業はIT担当者にとっても重要な工程となるでしょう。
同じ回線でもこれまで通りの通信速度が保たれるとは限らない
回線事業者やプロバイダーを継続しても、移転先で同じ通信速度のネットが利用できるとは限りません。とくに、ほかの利用者からの影響を受けやすい「PPPoE」という通信方式を採用している場合には注意が必要です。
PPPoE方式は、プロバイダーごとに設置されたネットワーク終端装置を経由する必要があり、これにより同時に処理できる接続数が決まっています。地域によって利用者数が異なるため速度に差が出るほか、夕方や週末など、一般利用者が混雑する時間帯で遅延が発生しやすく、安定性の低い通信方式です。
オンラインミーティングやリモートワークへの対応など、通信量の増加が見込まれる場合には、新しい通信方式である「IPoE」に対応している事業者を探すという方法もあります。
オフィスレイアウト設計
オフィスのフロアレイアウト設計には、IT担当者も積極的に参画して、一緒に取り組むことが重要です。
複合機やサーバー、ネットワーク機器の配線や電源についても、この段階からアドバイスしておくことで後からの手戻りを避けることができます。
ネットワーク設計
オフィス内のLAN設計だけでなく、拠点間をつなぐWAN回線、リモートアクセス用のVPN機器なども考慮にいれ、自社に最適なネットワーク設計を行います。
今後、事業が拡大し従業員が増加しても対応可能なように、IPアドレスの割り当てを考えておく必要があります。
電源の十分な確保も、設計工程で一緒に盛り込むといいでしょう。
サーバールーム設計
オフィス内に複数台のサーバーを設置する場合は、専用空調や電源を確保したサーバールームを用意しなければなりません。
あるいは、小規模な事業所であれば、オフィスの一角にサーバーラックを設置するだけで十分な場合もあります。
また、クラウドサービスを活用することで、サーバールームを持たない運用にすることもできるでしょう。
設置や動作確認
今までのオフィスで使っていたネットワーク機器などを、新たなオフィスでも使用する場合は、土日などの移転日を使って、撤去〜設置〜動作確認を一気に行う必要があります。
セキュリティ面の動作検証や安全性診断も行うとなると、慌ただしい作業となり、抜け漏れが発生しないとも限りません。入念に準備を行いましょう。
コストとの兼ね合いもありますが、このタイミングで新たなネットワーク機器を導入できると性能向上にもつながります。保守期限なども考慮して、機器の買い直しも検討しましょう。
3-3. セキュリティ対策を万全にする
今やインターネット接続は当たり前であり、企業は常にサイバー攻撃の脅威にさらされています。
新たなオフィス移転に合わせて、最新のセキュリティ対策をとる必要があります。
- UTM(統合型脅威管理)などのセキュリティ機器の活用
- 最新セキュリティソフトウェアの導入
- アクセス制御とセキュリティポリシーの策定
セキュリティ対策を万全にすることで、移転後のネットワーク環境を安全に保つことができます。
3-4. 専門業者の利用を検討する
オフィスのレイアウト設計や、LAN/WANも含めたネットワーク設計は、専門業者を積極的に活用することも検討しましょう。
専門業者のサポートを利用することで、移転作業を安全かつ効率的に行うことができます。
特に、インターネット回線の事業者であれば、セキュリティ周りも含めたネットワーク設計〜構築まで請け負っている専門業者も多いはずです。
経験や知見のある業者をうまく活用しましょう。
4. まとめ
オフィス移転に伴うネットワークのトラブルの回避は、安定したビジネス継続に不可欠です。
一方で、オフィス移転はネットワーク構成の見直しの絶好のタイミングであるとも言えます。今後、パンデミックなど有事にそなえたリスク回避の手段として、急な帯域の増減に備えた柔軟なネットワークサービスの導入や、トラフィックの優先順位によってネットワークを最適化するSD WANサービスの利用なども検討してみてはいかがでしょうか。
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