月に一度のセキュリティ更新はPCを安全に保つために不可欠ですが、業務効率を著しく低下させる原因にもなっています。
本記事では、Windows UpdateによってPCやネットワークが遅くなる原因をひも解き、個人ですぐにできるWindows 11の設定見直しから、企業の情シス担当者を悩ませるネットワーク課題の根本的な解決策までを詳しく解説します。
「Windows Updateで遅くなる」と一口に言っても、実は大きく分けて2つの異なる現象が起きています。まずは、自社の環境でどちらの遅延が発生しているのか、あるいは両方なのかを切り分けることが重要です。
1つ目は、PC本体の処理能力が追いつかず、動作が重くなるパターンです。Windows Updateのバックグラウンド処理では、大容量ファイルのダウンロード、解凍、システムへのインストールが同時に行われます。これによりPCのCPU、メモリ、ストレージの使用率が跳ね上がり、Excelの入力が遅れたり、アプリケーションの起動に時間がかかったりする現象が発生します。
2つ目は、インターネット回線や社内ネットワークそのものが遅延するパターンです。更新プログラムのダウンロードによってネットワークの帯域が占有されてしまうことで発生します。この場合、アップデートを実行している本人のPCだけでなく、同じネットワークに接続している他の社員のWeb会議やクラウドサービスの利用といった通信にも、遅延や切断などの悪影響を及ぼします。
個人のPCスペックだけでなく、なぜ会社全体のネットワークにまで深刻な影響を与えてしまうのでしょうか。主な原因は以下の3点に集約されます。
現代のWindows Update、特にOSのメジャーアップデートや累積更新プログラムは、ファイルサイズが数GB規模になることもあります。これほどの巨大なデータがネットワーク上を流れると、当然ながら通信帯域はあっという間に逼迫し、他の業務に必要な通信を圧迫してしまいます。
毎月第2火曜日(日本時間では水曜日)に配信される月例アップデートなどにより、始業と同時に社内の数十〜数百台のPCが一斉に更新プログラムのダウンロードを開始します。個々のダウンロード量が大きくなくても、これが束になることで社内の通信量が急激に跳ね上がり、ネットワーク機器や回線の上限を超えてパンク状態に陥ります。
近年、Microsoft 365やSalesforceをはじめとするクラウドサービスの導入が進み、企業の業務はインターネット通信に大きく依存するようになりました。平時でさえインターネット回線への負荷が高まっている中、そこにWindows Updateの巨大なトラフィックが上乗せされることで、ネットワークの遅延がより顕著に現れるようになっています。
ここからは、個人のPCレベルですぐに実行できる具体的な対策を4つ紹介します。Windows 11の環境を前提としていますが、Windows 10でも基本となる考え方は同じです。
Windowsには、ユーザーがPCをよく使用する時間帯を学習し、その時間帯の自動的な再起動やアップデートを抑制する機能があります。設定画面の「Windows Update」から「詳細オプション」を開き、「アクティブ時間」を業務時間(例:9:00〜18:00)に手動で固定設定することで、日中の業務中に突然PCが重くなる事態を回避しやすくなります。
配信の最適化とは、同じネットワーク上にある別のPCから更新プログラムをダウンロードできるようにする機能です。一見便利ですが、社内ネットワークのトラフィックを意図せず増大させる原因になることがあります。
「設定」>「Windows Update」>「詳細オプション」>「配信の最適化」へ進み、この機能を「オフ」にするか、許可する対象を「ローカルネットワーク上のデバイス」のみに限定することで、無駄な通信を削減できます。
バックグラウンドでのダウンロードが帯域を食いつぶさないよう、Windows側で制限をかけることも可能です。「配信の最適化」画面のさらに奥にある「詳細オプション」から、ダウンロードに使用する帯域幅を「絶対的な帯域幅(Mbps)」または「割合(%)」で指定できます。
これを低めに設定することで、時間はかかりますが業務への影響を最小限に抑えながらバックグラウンドでダウンロードを進めることができます。
最もシンプルかつ確実なのが、自動更新に頼らず、業務終了後や昼休みなどのPCを使わないタイミングで手動アップデートを行う方法です。「Windows Update」画面から「更新プログラムのチェック」をクリックし、そのままPCを放置しておくことで、業務中の遅延ストレスを回避できます。
前述した対策は個人単位では有効ですが、企業ネットワーク全体の安定稼働を担う情報システム部(情シス)の視点で見ると、社員個人のリテラシーや設定に依存する対策には限界があります。
企業特有のネットワーク課題として、以下のような壁が立ちはだかります。
社内のアップデートを統制するため、多くの企業が「WSUS(WindowsServer Update Services)」を導入しています。しかし、WSUSサーバー自体の保守・運用には専門知識と多大な工数が必要です。
WSUSはインターネット側の通信量削減に有効ですが、社内環境によっては配信タイミングによるLAN内のトラフィック集中が課題となることがあります。そのため、根本的なネットワーク遅延の解消には至りません。
リモートワークの普及により、自宅から社内ネットワークへVPN接続する社員が増加しました。VPNを経由した状態でWindows Updateが実行されると、社内のインターネットゲートウェイとVPN機器に膨大なトラフィックが集中し、 VPN機器やゲートウェイに負荷が集中し、業務システムへのアクセス性能に影響が出るケースがあります。「VPNのボトルネック問題」が多くの企業で深刻化しています。
「ネットワークが遅いなら、通信回線を太く(増速)すればいい」と考えるかもしれません。しかし、月に数日しか発生しないWindows Updateのトラフィックピークに合わせて1ギガから10ギガなどの上位回線へアップグレードすることは、毎月の固定通信費を大幅に跳ね上げます。コストパフォーマンスの観点から、情シスにとって単純な回線増速は現実的な選択肢とは言えません。
「固定コスト(帯域幅)は増やしたくないが、ネットワークの遅延は解消したい」。この課題を解決するために注目されているのが、ネットワークインフラ側での賢いトラフィック制御です。ここでは、Coltが提供する2つの異なるアプローチによる根本的な解決策をご紹介します。
1つ目のアプローチは、既存の帯域幅を広げることなく、通信のやり繰りを最適化する方法です。「Colt IP Cloud Prioritisation」は、ネットワーク上を流れるアプリケーションの通信帯域を自動で識別・制御するサービスです。
例えば、Microsoft 365やZoomなどの業務に直結する通信の優先順位を最も高く設定し、Windows Updateのバックグラウンド通信の優先順位を低く分離することが可能です。これにより、Windows Updateが実行されても重要業務の通信帯域は確実に保護されます。
回線帯域を物理的に拡張することなく、コストを抑えたまま快適で安定したネットワーク環境を実現できる、合理的な解決策です。
2つ目のアプローチは、必要なタイミングに限定して帯域そのものを一時的に広げる方法です。「Colt NaaS on Demand」は、SDN(Software Defined Network)技術を活用し、ユーザー企業の専用ポータルから即座にネットワーク帯域の拡張・縮小ができるサービスです。
Windows Updateのパッチ配信日など、「トラフィックの急増が事前に予測できる日」や「突発的に回線が逼迫したタイミング」だけ、オンデマンドで帯域を拡張します。そしてアップデートの波が過ぎ去った後は、すぐに元の帯域幅に戻すことができます。
ピーク時に合わせて高額な回線を契約し続ける必要がなく、必要なスピードと圧倒的なコストメリットを両立する次世代のネットワーク運用が可能になります。
Windows Updateによる遅延は、個人のPC環境と企業のネットワークインフラの両方に起因する複雑な問題です。まずはWindowsの設定を見直すことで個人の被害を最小限に抑えることが大切ですが、企業全体の生産性を守るためには、情シス主導によるネットワークの抜本的な見直しが不可欠です。
単純に高額な太い回線を契約するのではなく、「通信の優先順位をつける」あるいは「必要な時だけ帯域を広げる」というColtの先進的なソリューションを活用することで、コストを最適化しながら遅延ストレスのない快適な業務環境を手に入れてはいかがでしょうか。




