最新の冗長化とは?
ビジネス継続性を確保するベストプラクティス
災害や障害発生時に基幹システムが停止すると、企業活動に大きな影響を与えます。重要なシステムが停止すると、売上減少や生産性の低下、顧客サービスの停止など、企業活動に甚大な影響を及ぼします。そのため、事業継続を可能にするためにネットワークやシステムなどのIT資産に冗長化対策を行うことが不可欠です。
この記事では、冗長化の必要性やメリット、デメリット、冗長構成にすべき対象を解説します。
目次
1. 冗長化とは
企業が事業を継続する上で、システムダウンは深刻なリスクです。
冗長化とは、何らかの障害が発生した際に備えて、システムの可用性を高め、障害発生時にも運用を続けられるようにするための予備の設備やサブシステムなどを平常時から運用しておくことです。
また、冗長化により実現した安全性のことを「冗長性」と呼びます。
1-1. 冗長化が求められる背景
近年、自然災害やサイバー攻撃などのリスクが高まり、事業継続対策が必須となっています。災害時に基幹システムや重要なサービスが停止すると、受注・販売、生産管理、顧客対応などの企業活動に支障をきたします。
災害リスクの高まりとその影響の大きさから、冗長化による事業継続対策の必要性が高まっています。重要なシステムの可用性を高め、障害に強い仕組みを整備することが、企業の存続に欠かせない取り組みです。
1-2. 冗長化の目的と必要性
冗長化は、システムやITサービスに不測の事態が起きても、中断することなく継続稼働を可能にすることを目的としています。
単一のハードウェアや仕組みに頼るのでなく、あらかじめ予備を用意し、多重化構成とすることで、万一障害が発生しても代替リソースに切り替えて運用を継続できます。
たとえば、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などの重要なITリソースを複数揃え、障害が起きた際には、スムーズに代替リソースに切り替えられるようにしておきます。
つまり、冗長化によって障害に強いシステムを実現し、企業は事業を中断するリスクを低減できるのです。
2. 冗長化のメリットとは
冗長化にはダウンタイム削減、負荷分散、データ損失回避といった、3点の大きなメリットがあり、企業の事業継続対策において極めて重要な取り組みとなります。
詳しく解説します。
2-1.ダウンタイムの削減
冗長化の一番のメリットは、障害発生時のダウンタイム(システム停止時間)を最小限に抑えられることです。システムに冗長性を持たせておけば、障害が起きても代替リソースに切り替えることができるため、サービスの中断を防げます。
たとえば、ネットワーク障害が発生してもキャリア冗長化により複数回線を確保してあれば、別の回線を使ってダウンタイムを極小化できます。障害発生時のダウンタイムを削減できれば、業務への影響を最小限に抑えられます。
これにより、システムの稼働率が高まり、生産性の低下や売上げ減少、顧客サービスの低下などのリスク回避につなげることができるでしょう。
2-2. 負荷分散
多数のユーザーが同じタイミングでサービスを利用した場合、サーバーやネットワークのリソースをオーバーするリスクがあります。レスポンスの低下やサーバーダウンが発生するとサービスへの信頼を失いかねません。
IT資産を冗長化しておけば、情報処理を複数のリソースに分散できるため、パフォーマンスの安定化やスループット向上につなげることができます。その結果、ユーザーへの影響を最小限に抑え、信頼性を確保することができるでしょう。
2-3. データ損失の回避
データは企業にとって極めて重要な資産です。
マスターデータや日々の取引データなどを損失してしまえば、業務継続に甚大な影響を及ぼします。そのため、データの冗長化対策は必須といえるでしょう。
データの冗長化を行うことで、災害や障害発生時でもデータを確実に守ることができ、データ損失のリスクを回避できます。具体的には、ストレージ間のデータレプリケーションや、データベースのコピー機能などを使って、データを別拠点に保管しておきます。データセンター内だけでなく、遠隔地へのバックアップを行うことで、より確実にデータを守ることができます。
このようにデータを分散して保管することで、災害が発生した際のデータ損失リスクを最小にすることができるでしょう。
遺失したデータから復旧作業を行う必要もなくなり、スムーズなサービス再開が可能になります。
3. 冗長化のデメリットとは
冗長化には多くのメリットがあるものの、デメリットも存在します。
冗長化を導入する際は、これらのデメリットも十分に検討しておく必要があります。
3-1. 導入コストの増加
冗長化を実現するためには、本来必要なITリソース以上の余剰リソースを確保しなければなりません。冗長化するリソースによっては、多額の投資が必要になります。
たとえば、サーバーを冗長化する場合、処理能力上は一台で足りるとしても、予備のサーバー一台分のコストが追加でかかります。高可用性を実現するための冗長系システムを構築するには、かなりの初期投資が必要となります。
企業規模によっては、コスト負担が大きくなることがあるかもしれません。
3-2. 運用管理の複雑化
冗長構成では、本番システムとバックアップシステムの両方を管理する必要があり、運用が複雑化します。監視対象が増え、保守・運用コストも高くなります。
たとえば、サーバーのクラスタリングでは、サーバー間の同期処理などの管理が必要になりますクラスタリングとは、複数台のサーバーを連携して仮想的な一台のサーバーと見なす仕組みです。
あるサーバーに障害が発生しても、他のサーバーに自動的に処理を引き継がせることで、システムの可用性を高められます。しかし、クラスタリング構成の個々のサーバー間で常に情報を同期する必要があり、その管理が不可欠になるのです。
このように、システムが冗長化されるほど、運用管理の手間と複雑さが増大することはデメリットといえるでしょう。
冗長化にはコストアップ、運用複雑化といったデメリットが存在します。これらのデメリットを十分に検討し、ビジネスリスクとのトレードオフを見極めたうえで、ニーズと予算に見合った適切な冗長化レベルを選択する必要があります。
4. 冗長化する主な対象
冗長化は、システム全体に対して行う必要があります。
対象は、ネットワーク、ストレージ、サーバー/コンピューティングリソース、データセンター施設、クラウドなど多岐にわたります。それぞれの構成要素に応じて、最適な冗長化方式を検討・設計する必要があります。
4-1. ネットワーク
単一のキャリア回線に依存していると、その回線が使えなくなったときに通信が確保できなくなる危険性があります。
リスク回避のためには、メインで契約している通信キャリアとは別に、他のキャリアのネットワークをサブ回線として用意しておくキャリア冗長化も重要です。特定キャリアの障害やネットワーク機器の故障などによる通信切断を防ぐことができます。
また、専用線と広域イーサネット、インターネット回線といった異なる種別の回線を組み合わせることも、高い可用性を実現することにつながります。
近年では、複数のネットワーク経路を効率的に活用するために、SD WANによってトラフィックを最適な経路に振り分ける「ロードバランシング」による負荷分散も主流となっています。
Coltは自社所有ネットワークを活用し、専用線やインターネット接続サービスを提供する通信事業者です。必要な時に必要な分だけネットワークを利用できる「セルフオーダー式ネットワークサービス(Colt On Deman)」も提供しています。繁忙期、閑散期に合わせて帯域調整しコスト削減を実現でき、冗長化対策に最適です。
ユーザー環境に合わせて最適なネットワーク構成をご提案いたしますので、本記事でご紹介したような課題にお困りの方はぜひColtにご相談ください。
4-2. ストレージ
データを保存するためのストレージに障害が発生すると、システムダウンによりビジネス継続が難しくなります。
複数のディスクを冗長に組み合わせ、仮想的なドライブとして構成するRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)技術を使ったストレージシステムを活用することは、非常に効果的でしょう。
また、複数のストレージ間でデータの複製を作るレプリケーションを、遠隔拠点に設定することで、災害発生時でもデータを確実に守ることができます。
4-3. サーバー/コンピューティングリソース
単一サーバーではなく複数台を組み合わせ、一部で障害が発生してもサービスを続けるクラスタリング構成や、障害発生時に自動的にフェイルオーバーする仕組みを活用することで、サーバーの可用性を高めることが可能となります。
また、昨今ではサーバーの冗長化としてクラウドを使用するケースも主流です。クラウド導入はサーバー構築のための初期投資が不要かつ、ハードウェアの準備も不要であり、サービスを利用した分だけ料金が発生するため、コストパフォーマンスが高いことがメリットです。
より障害耐性を向上させるためには、マルチクラウドによるクラウド冗長も可能です。ネットワーク同様、複数のベンダーを利用することで1つのベンダーに依存しないリスクマネジメントが可能となります。
4-4. 施設
災害発生時に、システムやデータを復旧するための DR(Disaster Recovery Plan/災害復旧計画)対策の観点で、データセンターやオフィスなどの施設自体を冗長化することも重要です。
本社と異なる地域に、データセンターとネットワークを冗長化したバックアップサイトを構築することで、災害が発生しても重要業務を中断させないための対策を講じることを検討しましょう。
以上のように、システムを構成する様々な要素に対して、リスクに応じた適切な冗長化対策が必要不可欠です。企業は、これらの対策を組み合わせて多層的な業務継続体制を構築することが求められます。
5. まとめ
近年の災害リスクの高まりから、企業には事業継続性の確保が強く求められています。
冗長化が、このような事業継続を実現するための重要な対策です。システムトラブルや災害の発生時期は予測できません。しかし、適切な冗長化により、障害発生時でも事業を継続できる態勢を整えることができます。
ITシステムの重要性が高まる中、冗長化は企業の事業継続と存続に不可欠な取り組みといえるでしょう。
導入事例
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